どんな機内食が出るかでエアラインを決める人はそう多くはないはず。そのくせ、おいしくないと評価がガクンと下がってしまうのも事実。機内食が長い空の旅のハイライトであることは間違いありませんよね。せっかくだから事前にリサーチして、もっともっと“おいしい”思いをしてみませんか。
有名シェフとのコラボメニューはいまも花盛り
ファーストやビジネスクラスの機内食では、ご存じのように有名シェフとのコラボメニューが花盛りです。こうしたコラボが日本就航路線で始まったのは、おそらく2000年に入ってから。先駆けともいわれるスイス インターナショナル エアラインズ(当時のスイス航空)が、「オテル ドゥ ミクニ」の三國清三シェフとのコラボをスタートさせたのは2001年のこと。「トゥーランドット」の脇屋友詞シェフ、「クイーンアリス」の石鍋裕シェフらもこのころ、エアライン各社とのコラボメニューをスタートさせています。
JALの機内食コラボメニュー



この流れは、いまも衰えていません。JALには日本料理「龍吟」、フレンチ「SUGALABO」らに加え、日本料理「くろぎ」のシェフが2016年から加わりました。パリ発羽田行き便では、パリで「SOLA」を営む吉竹広樹シェフらがプロデュースしています。
ANAの機内食コラボメニュー

ANAは、日本料理「銀座奥田」やフレンチ「エスキス」ら、こちらもミシュランの星をもつ日本のレストランシーンを引っ張るそうそうたる顔ぶれ。ディナーに行くとなったら最低でも2万円は覚悟の星つきレストランばかりですし、なにより、予約が取りづらいところが多く行きたくてもなかなか入れませんから、空の旅はその味の一端に触れられる貴重な機会ですよね。
機内食のコラボメニューが盛んな理由は技術の進化にあり
では、なぜコラボが盛んなのでしょう。もちろんブランド力の強化もあると思いますが、なにより昨今の調理器具や調理技術の目覚ましい進化が大きいのではないでしょうか。そうした技術の進歩で、実際、魚や肉の火入れなどは以前よりずっとよくなっていますし塩気より旨みを重視するなど味も変わってきています。
そもそもプロデュースしているシェフたち自身も最先端の調理法を積極的に取り入れ、そうしたことに精通している人が多いですから“どうせ機内食でしょ!?”というレベルでは済ませません。実際、お店と同じスペシャリテを組み込んでいるシェフもいますしプレゼンテーションも凝ったもの。
ただJALやANAの場合、どのシェフの料理が楽しめるかは時期や路線次第です。ツアーやアップグレードなどでビジネスを利用する機会があれば、事前にチェックしてシェフの料理の特徴などを調べておくとより楽しめるはずです。また、シンガポール航空は期間、路線問わず8か国のスターシェフの機内食が事前に選べるようになっていてさらに進んでいます。
欧州系エアラインの機内食は郷土色をフィーチャー
シェフとのコラボだけではありません。欧州系エアラインのビジネスクラスでは郷土料理をテーマにした機内食が楽しみです。そのひとつがコラボの先駆者的存在のスイス インターナショナル エアラインズ。スイス発のビジネスクラスでは、3か月ごとに地方を変えながら郷土料理を出しているほか、スイス産のチーズも提供されています。
イタリア・アリタリア航空のビジネスクラスも同様。郷土料理の集合体といわれるイタリア料理の特色を活かして、イタリア発のフライトではエミリア=ロマーニャ、ピエモンテ、トスカーナ……など、期間ごとに地方を決めて、その土地の郷土料理をワゴンでサービスしてくれます。驚くのは、アンティパストから、ドルチェ、パンに至るまで郷土色にこだわり、しかも、同じ地方のワインリストまで用意していること。イタリア料理界の巨匠がプロデュースしているそうですが、シェフとのコラボなどを声高に叫ばず郷土料理で勝負しているところが、さすが食に誇りを持っている国ならでは。アメリカの「グローバルトラベラー」誌の「最優秀機内食賞」を6年連続受賞しているというのも納得です。
食へのプライドならフランスも負けてはいません。エールフランスではエコノミークラスでも追加料金を払えばオーダーできる“アラカルトミール”を始めています。フランスのクラシックな郷土料理から新進気鋭のシェフである「ラカジュ」のジャン・アンベールによる斬新な料理まで、フランスの新旧の味が楽しめる5種類をパリ発便でスタンバイ。料理は15ユーロからでマイルで支払うこともできます。また、航空券を購入する際はもちろん、24時間前までならインターネットチェックインをする際に申し込むことができるのも便利です。ちなみに、アンベールはあっと驚くような食器で楽しませてくれる話題のシェフ。空の上でもう一軒レストランを訪問するつもりでオーダーするのもいいかもしれません。このアラカルトスタイルのメニューはKLMオランダ航空などでも行っていて今後広がっていきそうです。
特別食はベジタリアンだけではありません
そして近年、もっとも進化しているのが特別食です。これはファーストやビジネスクラスに限ったことではありません。そもそも特別食とは、通常メニューとは別に健康上や宗教上の理由などで食事を制限されている人向けに用意されているメニューのこと。以前は、ベジタリアンか、ごく一部の宗教食が選べる程度でしたが、いまはその選択肢が驚くほど増えています。ベジタリアン、ヴィーガン、グルテンフリー、コーシャ、低脂肪食……と、ほんとうに豊富。
シンガポール航空では、エコノミークラスで申し込める特別食が、なんと35種類にも及んでいます。健康上の理由による制限食など、エアラインによっては一部診断書が必要なところもあるようですが、基本的には、その宗教に入っていないからといって選べないということはありません。
エコノミーでも特別食ならオーダーできます
参考JALの特別食
お食事の種類 | お申し込み受付期限 | |
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JALホームページ | 電話・メール | |
乳幼児食 | 便出発25時間前まで | 便出発24時間前まで |
チャイルドミール | ||
ベジタリアンミール | ||
低脂肪ミール | ||
低塩分ミール | ||
低カロリーミール | ||
低グルテンミール | ||
消化の良いお食事 | ||
糖尿病ミール | ||
フルーツミール | ||
アレルギー対応食 | JALホームページからはお申し込みいただけません。 電話またはメールにてお申し込みください。 |
便出発96時間前まで |
ベジタリアンミール(生野菜) | 便出発24時間前まで | |
シーフードミール | ||
低乳糖ミール | ||
ヒンズー教ミール | ||
ヒンズー教ベジタリアンミール (アジア風) |
||
オリエンタルベジタリアンミール | ||
イスラム教ミール | ||
ジャイナ教ベジタリアンミール | ||
ユダヤ教ミール | 便出発72時間前まで |
エコノミークラスを利用する時は、特別食を予約するのも選択肢のひとつです。椅子に座っているだけでほとんど動かないのに、こってりした料理をお腹いっぱい食べてしまっては健康体でも胃が疲れてしまいますよね。そのため、中には、サラダとフルーツしか食べないという人もいるようですがそれではさすがにお腹がすいてしまいます。それに、LCCならいざ知らず、機内食は空の旅の楽しみのひとつですからもったいないですよね。
そこで、胃に負担をかけたくない人におすすめしたいのがベジタリアン系の特別食。中でもスパイスが苦手でないのならインド風ベジタリアンミールがおすすめです。もともとベジタリアンミールがある国ですしスパイスが効いているので野菜だけでも味が物足りないということがありません。
ただし、こうした特別食は事前に申し込んでおくことが必要です。申し込みの期限や特別食の種類はエアラインによって異なるので航空券を予約する際にチェックしてください。また、スイス発のスイス インターナショナル エアラインズのように機内食そのものが肉料理かベジタリアンのチョイス、というエアラインも出てきています。ちなみにここはチューリッヒにある老舗ベジタリアンレストラン「Hiltl」の監修。JALでもフードスタイリストによるやさしい味の家庭料理を始めていますから、今後、野菜中心のヘルシーな機内食も増えていきそうです。
最後に。帰国便の機内食はどうしていますか。通常の機内食が、現地の料理か日本食かで選べる場合、日本食を頼んでしまっていませんか。でも帰りこそ現地の料理を選ぶべき。日本食が恋しくなるころかもしれませんが日本に着けばいくらでも食べられます。現地の料理はそこの食材を使ってそこで作られたまさにその地の食文化です。せっかくだから機上で旅した土地の料理に舌鼓を打ちながら旅の名残を惜しみませんか。